萩原葉子『輪廻の暦』(講談社文芸文庫)読む。
自伝的小説3部作の完結編。離婚によって自由を得るも、生き別れた実母を引き取ることになり振り回される日々に。そんな中、大詩人であった父のこと、世話になった恩人のことを綴ることで生きる道を見いだす。そしてダンスに出合い、自己を解放していく。騙された男とのつかの間の邂逅、別れた夫との交流など、これまでの悲惨な生活を包み込むような後半生に、読者も一息をつけた。ハッピーエンド。
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萩原葉子『輪廻の暦』(講談社文芸文庫)読む。
自伝的小説3部作の完結編。離婚によって自由を得るも、生き別れた実母を引き取ることになり振り回される日々に。そんな中、大詩人であった父のこと、世話になった恩人のことを綴ることで生きる道を見いだす。そしてダンスに出合い、自己を解放していく。騙された男とのつかの間の邂逅、別れた夫との交流など、これまでの悲惨な生活を包み込むような後半生に、読者も一息をつけた。ハッピーエンド。
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萩原葉子『閉ざされた庭』(講談社文芸文庫)読む。
詩人・萩原朔太郎の娘による自伝的小説第2編。追い出されるように家を出て、そして結婚する主人公。しかしその相手がまた強烈なキャラクターで、「シャーラップ!!」などと英語を織り交ぜて叫び出す。今回も暗色だらけのなかで、唯一、アパートのご近所さんたちとの交流がほっこりする。はたして主人公に安楽の日は訪れるのか。つづく。
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萩原葉子『蕁麻の家』(講談社文芸文庫)読む。
大詩人・萩原朔太郎を父に生まれた作家の自伝的小説3部作の嚆矢。悲惨というか、ひとつも明るいところのない少女期を過ごすことになる。絶対的権力者の祖母、生活能力に乏しい父、出奔する母……。そして家を飛び出したかと思えば悪い男に騙され、父と死に別れる。とにかく祖母のキャラクターが強烈。果たして救いが訪れるのだろうか。少しは明るくなるのだろうか。つづく。
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井伏鱒二『還暦の鯉』(講談社文芸文庫)読む。
随想集。同業の文学者らについて触れているものはめっぽうおもしろい。太宰治の性格と社交性について苦い思いを吐露した「社交性」、作家として名前を残せなかった学生時代の知人との交友をつづった「岩田君のこと」は心に残る。
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忙しかった。。。
井伏鱒二『神屋宗湛の残した日記』(講談社文芸文庫)読む。
表題含め7編。表題作は秀吉らと交流のあった豪商・茶人の宗湛の日記の井伏解説付き一部抜粋訳。大名武将ら知った名前と聞いたことのある有名茶道具が出てきておぉと思うが、そんなに楽しいものじゃない。土産に生きた鰻を届けようと苦労する「うなぎ」、小栗上野介を斬ったという老人に事情を尋ねる「普門院の和尚さん」あたりがよい。
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井伏鱒二『漂民宇三郎』(講談社文芸文庫)読む。
天保期に難船し、ハワイやカムチャツカなどを経て帰国を果たした一行の記録小説。ところどころ面白いけれど、正直なところつまらんなあと読み終わったら、三浦哲郎の解説で驚きのどんでん返しが。
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山田風太郎『太陽黒点』(角川文庫)読む。
完全犯罪ミステリー。だがなかなか事件は起こらない。戦争を知らない若者たちの行状と、戦争を体験した者たちの変節と屈折がからみあって徐々に殺人事件を織り上げていく。序盤の流れからは想像できないところに結末を持っていっている。山風らしい怪作。
#読了
リチャード・ブローティガン『風に吹きはらわれてしまわないように』(松本淳訳、ちくま文庫)読む。
『ハンバーガー殺人事件』の改訳・改題。ちょっとびっくりするぐらいの〈普通〉の小説。つまりブローティガンらしくないという意味で〈普通〉。そしてこれがめちゃくちゃにいい。過ぎ去った少年時代、悔恨、忘れられない哀惜に満ちた情景を、美しく平易な文に書き上げる。遺作。
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2025年の記録。新刊では電子版含め98作品購入し、読了したのは86作(読了率87.7%)。12作が積み本と化した。積み本消化を含めた総読了は119作。国内61作、海外58作。無闇矢鱈に眠くて本が読めない時期があり、読了数は前年比減。古本での購入数が例年以上に多かった。
#2025年の本ベスト約10冊
R.フラナガン『第七問』(渡辺佐智江訳)
R.パワーズ『プレイグラウンド』(木原善彦訳)
P.エヴェレット『ジェイムズ』(木原善彦訳)
木山捷平『駄目も目である』
楊双子『四維街一号に暮らす五人』(三浦裕子訳)
E.クルニアワン『美と傷』(太田りべか訳)
佐久間文子『美しい人 佐多稲子の昭和』
R.F.クァン『バベル』(古沢嘉通訳)
高田大介『図書館の魔女』
岩井志麻子『べっぴんぢごく』
パーシヴァル・エヴェレット『赤く染まる木々』(上野元美訳、早川書房)読む。
殺害された白人男性のそばに黒人少年の遺体。そしてその遺体が消え、再び別の殺害された白人男性のそばに現れる……。ミステリーのように次々起こる殺人と謎。しかしこの物語はどこにもたどり着かない。だからこそ空恐ろしい。これまで現実にあった白人によるリンチ事件がなにもなかったように。逆説的に強烈な小説。
#読了
サラ・ピンスカー『いつかどこかにあった場所』(市田泉訳、竹書房)読む。
第2短編集、多彩な12編収録。どうとらえたらいいのか正直戸惑う作品もあってちょっと落ちるかなとも感じたが、前作『いずれすべては海の中に』が良すぎたためにそれは仕方ないかな。ダークな風合いの「二つの真実と一つの噓」、奇想が大爆発して終始唸りっぱなしだった「われらの旗はまだそこに」は秀逸。個人的には「今日はすべてが休業してる」がこのまま終わらせるのがもったいないくらい、続きが読みたくなるような作品だった。
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ツェリン・ヤンキー『花と夢』(星泉訳、春秋社)読む。
チベット・ラサのナイトクラブで働く4人の女性の痛切な物語。彼女らを襲う性暴力と搾取に読んでいて心が痛くなる。悲惨な境遇を〈前世の業〉とし現世の救いのない生活の中、少しでもよく生きようと切実に祈る。訪れる過酷な運命に絶望したが、読後、振り返ると、ささやかでも確かな救済があることに気づいた⋯⋯。連帯と慈愛に満ちた傑作。
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チョン・ボラ『呪いのウサギ』(関谷敦子訳、竹書房文庫)読む。
SF・ホラー短編集。オーソドックスのものから不条理系まで多彩な10編。表題作は筋立ては古風だが語りの構造が凝っていてよい。いちばん印象的なのは排泄物が成長し語りかけてくる「頭」。シュールに加えてサスペンスフル。あとは「月のもの」という、処女懐胎ものを変奏し現代的な恐怖で味付けした作品が秀逸。表題作で国際ブッカー賞候補。
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ロバート・W・フィーゼラー『焚殺 歴史の闇に隠されたあるゲイ・クラブの悲劇』(柿沼瑛子・西本理恵子訳、国書刊行会)読む。
1973年、32人が亡くなったニューオーリンで起きた火災。放火が疑われるなかですぐに報道もやみ、忘却されていったのは犠牲となったのがゲイたちだったから......。忘れられた事件を丹念に掘り起こし記録に残した労作であるが、労作ゆえに記述が非常に枝葉にわたり読むのがなかなかに大変。
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講談社文芸文庫編『明治深刻悲惨小説集』(齋藤秀昭選、講談社文芸文庫)読む。
明治時代の「悲惨小説」「深刻小説」というジャンルのアンソロジー。有名どころは泉鏡花、田山花袋、徳田秋声、樋口一葉。名前は知っていたけれど初読みは川上眉山、広津柳浪、小栗風葉。名前すら知りませんでした、前田曙山、北田薄氷、江見水蔭。悲惨さを描くことで社会批判となったかどうか、花袋なんか少女への嗜虐趣味なんじゃないかと思ったよ。
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ジョー・ホールドマン『ヘミングウェイごっこ』(大森望訳、ハヤカワ文庫)読む。
失われたヘミングウェイの原稿(実話)をでっち上げてひと儲けしようかというコン・ノベルに、そこにヘミングウェイ本人が乗り込んできてしっちゃかめっちゃかになって多元世界が展開されていく。個々のエピソードは読めるんだが、じゃあ全体としてどう受け止めていいのかちょっとわかりにくい。
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宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社)読む。
最終作。シリーズ初作は2023年春刊行で、世間一般的には村上春樹の最新作の話題で持ち切りだったが、当時、国内の小説界の最大の収穫は成瀬だと直感し、それは間違っていなかった。ありがとう!
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ミア・コウト『夢遊の大地』(伊藤秋仁訳、国書刊行会)読む。
内戦で荒れ果てたモザンビークで、老人と記憶をなくした少年の幻想的ロードノベル。焼け焦げたバスのそばで死んでいた男の鞄にあったノート11冊を入り口に、少年らの旅とノートの書き手の旅がシンクロし溶け合っていく。最後の段落に、すべてが疾走し収斂していく。
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リチャード・パワーズ『プレイグラウンド』(木原善彦訳、新潮社)読む。
海とAIという人類に残された広大無辺なフロンティア世界を描いた長編。あまりに美しく、はかなく、愛おしい描写に自然と涙がこぼれてしまう。パワーズってこんなに泣かせにきたっけ? 一読して、ここに描かれた半分の世界は虚構に過ぎなかったのかという思いがよぎったが、そもそも全編がパワーズの創作の掌の上のものだということにはっと気づき、単純ながら核心的な構造に呆然とする。文句なしの傑作。
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深堀骨『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』(早川書房)読む。
ヒジョーに紹介しづらい、奇作怪作とその紙一重にある境界線上の短編8編収録。下品とも荒唐無稽ともトンデモともなんとでもいえるが、ときどきものすごく詩的であったりするからかなわない。3作読めば投げ出したくなる一方で、「飛び小母さん」には感動しちゃったよ。
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永井路子『波のかたみ 清盛の妻』(中公文庫)読む。
平家の興隆と滅亡を、清盛の妻として、一門の母として、天皇の祖母としての時子の視点から見た平家の物語。時子を主役に据えることで新しい見方を提示している。時子の弟の時平の描き方が抜群によい。判官贔屓というより平家贔屓の自分にとって申し分のない面白さだった。
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ちなみに、選択をミスってももとに戻って大丈夫なようにスピンが2本付いている親切設計です。
インタン・パラマディタ『彷徨 あなたが選ぶ赤い靴の冒険』(太田りべか訳、春秋社)読む。
ここではないどこかへ行きたいという願いを叶える赤い靴。悪魔から譲られた靴を履いて、あなたの/わたしの選択が自分の物語を冒険へと導く。昔懐かしいゲームブック形式で、マルチエンディング。きょう終えた物語は、きっとあしたには異なった結末を迎えることになるだろう。だけれどもひとまず本をおこうと思う。自分がいま/ここで読んだ物語もひとつの選択なのだから、それを大事にしたいから。
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アグスティナ・バステリカ『肉は美し』(宮﨑真紀訳、河出書房新社)読む。
人肉食が合法化された世界を描く。という粗筋で「肉はうまい」ってんだから、はっちゃけた明るいカニバリズム(?)かと思って読んだら、全編通して陰鬱かつ抑圧のディストピア系ホラーでしたよ。ある意味、ひねりのない描写が、つまり家畜の解体をそのまま人体に当てはめたという点で、ストレートすぎて逆に斬新。そして工業的な扱いが寒々しさをいや増す。結末は、うまいというかこれしかないだろうなという感じだけど、ちょっとオチをキレイにつけすぎたような。
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司馬嫌い的に『街道をゆく』は許容できるかどうか、読めるかどうか。
島田荘司『占星術殺人事件 改訂完全版』(講談社文庫、電子版)読む。
あ、しまった、これ、バカミスで有名な○○○○の『○○の○○○○』じゃん、というかこっちが本家で、読む順番が逆だったと20年以上経って気づく。主要トリックが判明してからはそういう意味で楽しく読めたが、それ以前の話の展開が長い……。自分のアタマのにぶさをおいておくとしても、本格系はやや苦手かもしらん。
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永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫)読む。
衆人環視の中で起きた仇討ち。後年、現場である芝居小屋近くに当時の状況を聞いて回る武士が現れるが、その目的は.......。藪の中的展開になるのかと、なかなか事件の真相が明らかにならないなかに、人情噺などでホロリとさせながら最後は二転三転。終盤、オチが読めたが、だからといって興ざめするというよりむしろそうであってこそと納得の展開に心が晴れやかになるおもしろさ。直木賞&山本周五郎賞。
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楊双子『四維街一号に暮らす五人』(三浦裕子訳、中央公論新社)読む。
古い日本風家屋をシェアする女子学生4人と大家の共同生活とそこで起こるちょっと不思議な出来事と素敵な魔法。ライトでポップ、しかし奥行きがありずしりとくる展開。シスターフッドにあふれ、いつまでも読んでいたい心地よさに、美味しそうな台湾グルメが相乗する佳品。
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